AP工法の概要

AP工法の特長

近年、既設構造物の老朽化に伴い、耐震補強工事のニーズは高まりを見せています。
「AP工法」は、耐震補強材として必要な性能と、吹付け施工用材料としての作業性を追及した完全プレミックスのモルタルを用いた、湿式吹付けによる耐震補強工法です。
簡易なモルタル吹付システムによって、一般的なコンクリート打設と同様に構造物をつくる耐震補強工事が可能です。

アフタープロテクション®の特長

1 省力化・工期短縮

従来のコンクリート打設と比較して、1/2〜2/3程度の工期での工事が可能です

  • 吹付け前面の型枠が不要
  • グラウト材注入が不要
  • 一度に300mm程度の厚さまで吹付け可能

2 施工場所を節約

生コン打設では施工困難な場所で、かつ建物を使用しながらの工事が可能です

  • コンパクトな吹付け装置は2トン車で搬送可能、エレベータで搬入可能
  • コンクリートポンプ車の停留が不要
  • 生コンの搬送時間規制などの制約なし、遠隔地でも施工可能
  • モルタルの圧送可能距離は60m(垂直部20m含む)

3 良好な施工環境・品質

湿式吹付の特性上、良好な環境で高品質の施工を提供します

  • ブリージングがほとんど発生せず、水処理作業が不要
  • 湿式吹付けにより、材料のリバウンド・粉塵の飛散が少ない
  • ビニロン繊維添加により、高いひび割れ抑制性能を発揮
  • AP工法協会が定める技術審査の合格者が施工を行うことにより、高品質の補強工事を提供

『AP工法』 (アフタープロテクション®吹付による耐震壁構築工法)

『アフタープロテクション®』吹付により壁を増設、増打ち、開口閉塞する湿式吹付耐震補強工法『AP工法』は、従来のコンクリート(RC)と同様の耐震診断基準・改修設計指針に基づいた設計方法にて、(財)日本建築防災協会の技術評価を受けています。

吹付施工
吹付施工
完成状況
完成状況

AP工法設計に用いる特性値

  1. (1) せん断強度設計に用いる圧縮強度 Fc=30N/mm²
  2. (2) 同 圧縮弾性率 2.23×10⁴N/mm²
  3. (3) 単位体積質量 22.0kN/m³

採用例

  • 駅ビル・駅舎、テナントビルなど繁華街のRC建造物
  • 工場(複雑な配管のある場所など)
  • 病院など公共施設(常時稼働、振動・騒音対策が必要な場所)
  • ホテル、旅館
テナントビル
テナントビル
工場
工場

AP工法による耐震壁構築

(a) 壁の増設
(a) 壁の増設
(b) 壁の増打ち
(b) 壁の増打ち
(c) 壁の開口閉塞
(c) 壁の開口閉塞
(d) 壁の増打ちと開口閉塞の併用
(d) 壁の増打ちと開口閉塞の併用

AP工法の材料

アフタープロテクション荷姿

AP工法では、完全プレミックスの「アフタープロテクション®」を使用します。
現場では水を入れて練り混ぜるだけで必要量を製造でき、配合管理も容易です。

AP工法に用いる材料の管理値を以下の表に示します。

試験項目 測定値(平均) 管理値 試験方法
フロー単位容積質量 (mm) 180 180±15 JIS R 5201 準拠
単位容積質量 (kg/L) 2.2 2.15以上 JIS A 1171 準拠
圧縮強度 (N/mm²) 48.0 34以上 JIS A 1108 準拠 (φ50×100mm)

コンクリートとの比較表

アフタープロテクション®とコンクリートの物性値(実測値)の例を下に示します。

項目 アフタープロテクション® コンクリート
材料 圧縮強度(N/mm²) 48 35
対コンクリート付着強度(N/mm²) 1.5 >1.0*
対鉄筋付着強度(N/mm²) 18.20 17.54
曲げ強度(N/mm²) 8.0 5.0
割裂引張強度(N/mm²) 3.8 3.0
圧縮弾性率(N/mm²) 38,100 24,400
ポアソン比 0.2 0.2
密度(g/cm³) 2.23 2.3
流動性 フロー値 180mm スランプ 8~21cm
乾燥収縮(90日) 0.08% 0.08%
凝結時間(夏期) 2時間前後 2時間30分前後
施工 吹付け 流し込み

*(財)日本建築学会「鉄筋コンクリート造建築物の耐久性調査・診断および補修指針(案)・同解説(1997)」による断面修復に使用されるポリマーセメントモルタルの品質規準を記載

設計の指針

「AP工法」は、湿式吹付けによって補強される鉄筋コンクリート造、または鉄骨鉄筋コンクリート造の壁を構築する工法です。
補強対象の建物の耐震補強計画に基づいて、接合部を含め、基本的に下記の指針、診断基準に従って設計されます。

  • 「2001年改訂版 既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準・同解説」
  • 「2001年改訂版 既存鉄筋コンクリート造建築物の耐震改修設計指針・同解説」
  • 「改訂版 既存鉄骨鉄筋コンクリート造建築物の耐震診断基準・同解説」
  • 「改訂版 既存鉄骨鉄筋コンクリート造建築物の耐震改修設計指針・同解説」

補強設計における材料(アフタープロテクション®)の特性値は以下を用います。

項目 特性値
せん断強度設計に用いる圧縮強度(N/mm²) 30
圧縮弾性率(N/mm²) 2.23×10⁴
単位体積質量 (kN/m³) 22.0

なお既存コンクリートの圧縮強度が13.5N/mm²以上の建築構造物が対象です。

設計・施工体制と指導内容

設計・施工体制の概要

AP工法協会は、「AP工法」における実施・責任体制および指導範囲を以下のように定めています。

  1. (1) 「AP工法」の設計は、AP工法協会の正会員のうち設計部門を有する会員または株式会社東京ソイルリサーチが監修した「設計内容確認書」に基づき、AP工法協会より指導を受けた耐震診断・補強設計の経験のある一級建築事務所が行う。
    本工法の設計に関わる計算、設計図書の作成に関しては、設計内容確認書に従って行い、AP工法協会が確認・保管を行う。
    設計された補強建物の設計に係る品質に対しては設計者が責任を負う。
  2. (2) 「AP工法」の施工は、昭和ライト株式会社により施工技術指導を受けたAP工法協会正会員が行う。
    施工に関する責任は、昭和ライト株式会社が指導内容に対して責任を負い、補強建物の施工に係る品質に対しては施工者が責任を負う。
  3. (3) 「AP工法」に使用する材料は、「アフタープロテクション®」を製造・供給する二瀬窯業株式会社が、品質に対する責任を負う。

指導内容

『アフタープロテクション®』吹付により壁を増設、増打ち、開口閉塞する湿式吹付耐震補強工法『AP工法』は、従来のコンクリート(RC)と同様の耐震診断基準・改修設計指針に基づいた設計方法にて、(財)日本建築防災協会の技術評価を受けています。

設 計
  • 増設壁に関する設計方法の指導
  • 「AP工法」特有の施工手順や型枠・ダレ防止メッシュなどの設置等に関する設計図書・特記仕様書への反映・作成指導
施 工
  • 「AP工法」特有の施工方法・手順(「APモルタル」の材料特性、使用機材とその特徴、準備段取り、吹付け方法、仕上げ・養生、安全など)の教育・指導
  • 施工実技指導
  • 技量度審査
APノズルマン試験の様子

AP工法の評価

技術の概要 プレミックスモルタル 「アフタープロテクション®」 を用い、湿式モルタル吹付けにて壁を増設、増打ち、あるいは開口閉塞することによって耐震補強を行う。 補強設計は従来のRCの設計方法と同様に行う。
諸元・性能 本工法は、湿式モルタル吹付けにて壁を増設、増打ち、開口閉塞する耐震補強工法である。 使用するプレミックスモルタル 「アフタープロテクション®」 は設計強度 30N/mm²で、その他力学的特性は普通コンクリートと同等であるため、従来のRCの設計手法によって耐震補強設計を行う。
当該モルタルにはビニロン繊維を添加しており、ダレ防止効果によって最大300mmの厚さを一度に吹付けることが可能である。
またビニロン繊維によって乾燥収縮ひび割れの抑制効果が発揮される。
本工法は吹付け施工であることから大掛かりな型枠やポンプ車が不要であり、狭い現場や高層階等にも適用できる。
既存技術との対比 従来の普通コンクリートを打設する壁の増設工法では、大掛かりな型枠やポンプ車などの設置が必要で、現場事情により制限を受けるのに対して、本工法では、吹付け施工であるため設置型枠が少なく、現場練りや吹付け設備がコンパクトであることから、狭隘な現場や高層階等、制限のある現場に適用可能である。
また、従来のモルタル・グラウトを注入する工法では、乾燥収縮ひび割れが発生・拡大しやすいのに対して、本工法で用いられる 「アフタープロテクション®」 はビニロン繊維が添加されているため、乾燥収縮によるひび割れの拡大が抑制される。
関連法規制 建築基準法に抵触する事項は無いと考えられる。
事故発生時の処置方法 施工時に、本工法に関する不具合が生じた場合、AP工法協会が適切な対策を検討し、不具合に対処する。 対処方法は、AP工法協会が適切な対処法を立案し、事業全体に対し指導を行い、事業主体に実施させる。